メディアジャパン学園ブログ

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2008/08/01

阿久悠先生。

阿久先生がお亡くなりになって、早くも一年が過ぎた。

この一年を振り返り、私は様々なことを思い出すのです。

「秀実ちゃん、新しいシャンソンの時代をめざそうよ。日本のためのシャンソンやろうよ・・・」

そう約束をして下さった阿久先生とは、もうお逢いすることができない。

 

 

私がパリでのシャンソン修行を終え、帰国してまもなく、私は事務所の片隅の応接セットのテーブルで、阿久先生の直筆の原稿を手にした。あれは2001年のちょうど夏のことだった。

歌謡曲の黄金時代を築き上げた阿久先生が私に日本のためのシャンソンを書いて下さった。

その時期には先生はご病気であまり歌を書いていない時期だった。

書き下ろしていただいた詩の一番上にあった原稿が「懺悔」だった。私は恐ろしくなって手が震えた。

その日の晩、私は嬉しさと怖さが綯い交ぜになって、夜中に家を飛び出し、公園を走り回ったのを覚えている。

 

神様もお忙しくて 長い話しは聞いてくれない。

 

 

この言葉が冒頭に始まる歌詞は、なまじっかパリかぶれして、いい気になっていたちっちゃなシャンソン歌手に、姿勢を正すように、そして言葉を大事にしろ!との無言の叱咤だった。

 

 

その後何人かの作曲者により、その詩に曲がついた。

「懺悔」の作曲者には独特の作曲を手がける谷川賢作さんが手がけて下さった。

谷川賢作さんのお父さまは詩人の谷川俊太郎さん。

さすがは、ひとことひとことの言葉を大事に凄みのあるメロディーをつけて下さった。

ピアノ一本でスタジオで「懺悔」のデモテープをとり、ある会議室で私は阿久先生と出逢った。

緊張のあまり、私は「佐々木秀実と申します。宜しくお願いします。」とありきたりなご挨拶しかすることが出来なかった。

先生は「よろしく。」とだけ仰り、ラジカセから流れる私の歌を、目をつぶってエンディングの終わりまで黙ってそれを聴いていらした。

険しそうに感じる先生の顔に私は5分弱の曲が、まるでそれはそれは長い時間のように感じた。

曲が終わってから、30秒ほど無音の時間が過ぎただろうか。先生はゆっくりと目を開け、ニッコリと微笑み、「佐々木秀実・・・。いいじゃない」とひとこと仰った。

私は全身の身体から力が抜けたようになった。

 

それが阿久先生と私のはじめての出会いだった。

 

その後「ヌーベルシャンソン歌手の旗手」とキャッチコピーを背負い、私は「懺悔」という日本のためのシャンソンとして、世の中にデビューした。

 

しかし、それはヒットというにはあまりに遠いスタートだった。

なかなか芽の出ない、相変らずちっぽけな私でも、阿久先生は私のことをいつも心に留めていて下さった。

 

「エディット・ピアフと美空ひばり、どちらにも成り得る不思議な青年。」

阿久先生が仰ったその言葉を、私は自ら魔法のように信じている。

歌をいのちとして生きていきたい。私はずっとそれを毎日念じている。

 

今の音楽には「うた」に宿る言葉がない。デジタルにいきついてしまった今だからこそ、言葉の色褪せぬ「うた」で私は勝負がしたい。

 

阿久先生にはもうこの世ではお逢いできない。けれど、私は先生の遺して下さったうたの中で逢うことが出来る。いつの日も歌を大切に、言葉と向き合っていきたい。それが私が出来る、精一杯の先生に対しての思いである。

 

繰り返してしまうが、阿久先生がお亡くなりになって、もう一年になる。先生はどこで私をみていて下さっているのでしょうか。

 

私は今、とても先生に逢いたい。

とても逢いたい。

 

もう一度、微笑んだ先生の顔がどうしてもみたい。

 

そう思うと涙がとまらなくなってしまう。

 

明日歌うために今、私のすぐ手元にある「懺悔」の楽譜が滲んで見える。

 

 

 

 

 

 

13 コメント
コメント一覧
  • 1

    早いものですね。阿久悠さんが逝かれて今日で1年ですね。
    今夜9時から日本テレビで開局55周年記念特別番組
    「ヒットメーカー!阿久悠物語」が放映されていましたね。
    僕はラストまで見ていましたが、最後の場面でペンが手から落ちる
    瞬間ジーンとなりましたね。
    昨年、ホテルニューオータニであった「送る会」の後の精進落しでも、
    阿久さんを偲んで皆で呑みましたが寂しかったですよね。
    秀実ちゃんのこのブログ、あなたの思いが綴られておりとっても
    いいですよ。
    天国の阿久さんへの恩返しに、是非メジャーになって下さいね。

    by: ビリケン, on 2008/08/02
  • 2

    秀実ちゃんの阿久悠さんに対する思いに胸があつくなりました。
    阿久さんは秀実ちゃんにきっと夢を託していたと思います。
    秀実ちゃんなら歌ってくれる・・・と。
    愛燦燦をダウンロードして聞きました。
    もう、神がかっているようかの歌声です。
    ひばりさんも生きていたら、次の世代を秀実ちゃんに託したことでしょう。
    ひばりさん以外でこのようなスゴイ歌手は他にいないと本気で思います。
    秀実ちゃんの「いのちの歌」はもの凄いエネルギーを感じます。
    阿久さんは秀実ちゃんにひばりさんへ書けなかったような本物の歌を歌わせたかったのではないのでしょうか。
    素晴らしい作詞家がとうとういなくなってしまいました。
    売れるための音楽、明日には消えてしまう音楽。
    そんな中で秀実ちゃんは特別に貫いている歌手です。
    やっと秀実ちゃんが世に出られる、また世に出るべき時代がやってきたのですよ。
    私はそう思えてなりません。阿久さんは天国から手をふっているようです。あ。天国からのプロデュースなのかも。

    by: ひまわり, on 2008/08/02
  • 3

    僕は懺悔が大好きです。こんなすごいインパクトのある歌はめったにありません。秀実さんの阿久悠さんの歌もっとききたいです。

    by: こころ, on 2008/08/02
  • 4

    偉大な先生の阿久悠さんは、きっと天国から秀実ちゃんの活躍を
    見守って応援してくれているわよ。
    デビュー曲が「懺悔」とは衝撃ですが、聴くほどに味が出てくる曲ですよね。わたしは「姫」も好きです。
    デビューから難しい曲ばかりだったですね。
    貴女はまだお若いのに、人の心を揺さぶることの出来る、ただならぬ
    魅力をお持ちの歌手です。
    これからも阿久悠さんやフアンの期待に応えて、愛の歌を唄い続けて
    くださいね。

    by: kuniko, on 2008/08/02
  • 5

    なんかすごぉく秀実ちゃんの思いが伝わってきて泣きそうになってしまいました(>_<)

    by: 雨月。, on 2008/08/02
  • 6

    阿久悠先生が亡くなってもう一年経ったんですね。私が「佐々木秀実」という素晴らしい歌手に出会えたのも、阿久悠さんのご縁でした。
    闘病中の阿久さんを励まそうと毎月行われていた「大至のソングカフェ♪阿久悠を唄う」というライブのゲストとして出演した秀実さんを知りました。最初は、シャンソン?ということで少し引いていましたが、阿久さんが絶賛したという秀実さんの「街の灯り」を聴いた時、電気が走りました。「あっ!美空ひばり」だと鳥肌が立ちました。秀実さんにハマッタ瞬間でした。皆さんも着うたで配信されている愛燦燦を聴けばわかってもらえると思います。
    まさに阿久さんが「エディット・ピアフと美空ひばり、どちらにも成り得る不思議な青年」と言っていた通り、素晴らしいとてつもない才能を持った青年?です。
    今、秀実さんが頑張っている姿を阿久悠先生もきっと喜んでいると思います。
    忙しいスケジュールが続きますが、身体に注意して頑張ってください。9月のパルコ、10月のグレコと楽しみにしています。

    by: バット, on 2008/08/02
  • 7

    阿久悠さんの遺した言葉で「3分の歌も2時間の映画も感動の
    密度は同じである」がありますが、
    秀実ちゃんはステージで「シャンソンは3分間のドラマ」と、
    よく言いますよね。
    貴女もその3分間で素敵な歌唱力と演技力で、お客を感動させるのですね。
    これからも感動を与え続けてくださいね。

    by: 大日翠, on 2008/08/02
  • 8

    日本のためのシャンソン・・・

    先生の熱い想いと、秀実ちゃんの真っすぐな姿勢と努力の甲斐あって、開花しつつあるじゃないですか!!

    泣いてなんかいられないよ!がんばれ!!!

    by: SHI-RO, on 2008/08/02
  • 9

    青山のディナーショー!最高でしたね~。お料理も美味しかったし、なんといってもひでみちゃんのショーは最高!また今夜も泣きました。
    ひでみちゃんのショーは歌をしっかり聴けて、その世界に引きずりこんで、トークで笑わせる(笑)
    スゴいテンポ感を感じます。
    あっという間のショーでした。
    「老女優」すごい歌ですね。ひでみちゃんはまだ28のはずなのに、まるでそこに老女優がいるかの説得力でした。
    美輪さんのステージで何度か聞いたことがありますが、私はひでみちゃんの生々しい圧倒的な歌に更に感動しました。
    パルコはチケット発売翌日にもう完売で取れなくて、非常に残念です。どうにかしていけないかと思案中。
    10月のグレコは予約しました。
    グレコまでじゃ長すぎる!

    阿久さんの「懺悔」は名曲ですね!ひでみちゃんに阿久さんは夢を託したのだと思います。

    素晴らしい夜をありがとう!
    それにしても、今日の1万2千円は安すぎです(笑)

    by: グリンピース, on 2008/08/03
  • 10

    今日のディナーショーの懺悔は特別に感じました。
    秀実さんの魅力はやはり生ですね!
    阿久さんは秀実さんの今の活動を天国で喜んでいると思います。
    しかし、老女優、すごい迫力でしたね~
    はじめてききました。
    秀実さんはいったい何者でしょうか!

    by: かずや, on 2008/08/03
  • 11

    秀実ちゃんの歌には魂の色褪せぬ「力」があると思います。
    この世に体を失ったとしても、その魂が先生に届いていると私は思います。

    by: 玲子, on 2008/08/03
  • 12

    NHK-TV「歌謡コンサート・阿久悠特集」で、名曲のオンパレード&
    秘蔵映像も公開していましたね。5000曲以上も書かれたんですね。

    by: 道, on 2008/08/06
  • 13

    毎月、青山のライブハウスでやっていた仲間で、
    阿久悠さんを偲んでまたライブをやりたいですね。

    by: yumiko, on 2008/08/12
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