2008/05/31
絵本 ながいながい旅 のこと
イロン・ヴィークラントと聞いても思い当たらないかもしれませんが、絵をご覧になれば「ああ!」と気付く方もまた多いはずです。表紙の女の子を見て、どこかで会ったことがある・・・という気持ちになりませんか?この方は、「やかまし村シリーズ」をはじめ、リンドグレーンの作品の多くに挿絵を描いている画家です。重いテーマながら読後感が清清しく、完成度の高い作品ですので、小学生以上の方に是非!と思いご紹介します。
昨日配本されてきたこの絵本は、戦争を逃れて流転した彼女の自伝的作品です。他国の侵攻にさらされるエストニアの、母方の祖母の家から父方の祖母の住む田舎へ、そしてさらにスウェーデンの叔母の許へと、ふたつの不安な一人旅を経験した少女時代が舞台ですが、子ども時代のきらめくような時間も生き生きと描かれ、だからこそ戦争のもたらす残酷さが浮き上がって見えてきます。
そして、わたしが一番惹かれたのは彼女:イロンと2匹の犬との強い絆。扉に描かれた少女と犬のカットですでにそれが感じられて、まだ本文を読む前にジーンとしてしまいました。両親の愛を知らず、頼りにする祖母たちとの否応ない別れが繰り返されても、その都度少女が前向きに生きられたのは、愛犬と結ばれた深い愛情のゆえではなかったかと絵を見ていて感じます。
そして、画家である叔母との暮らしで「描く」ことを得て、少女が自分の人生を確かなものにしていったのはその後のことです。

ながいながい旅 エストニアから逃れた少女
絵:イロン・ヴィークランド
文:ローセ・ラーゲルクランツ
訳:石井登志子
岩波書店 税込¥1995.
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