テレビ:中国の日本報道が変わってきた-靖国神社からナベツネさんまで-
今日は長いです。
お酒を飲んでくだを巻いているわけではありませんよ。
* * *
2005年の夏の終わり、私が中国に来たころ、
日中関係は悪化の一途を辿っていました。
そのころ、テレビをつければ毎日必ずどこかのチャンネルで
古い日中戦争の映画を放映していて、画面に映るのは
凶暴でズルい旧日本軍兵士が中国の善良な市民を傷つけてばかり。
ニュース報道でも、日本のニュースといえば小泉首相の靖国参拝の姿や、
靖国神社の周りで旧日本兵の服装をしてニッポンバンザイを叫ぶ
一部の人々が映るばかりでした。
とりわけ、中国にとって、2005年は単なる終戦60周年ではなく、
「抗日戦争勝利60周年」という特別な年だったのです。
私は日本人だから、自分の国・日本が好きです。
でも、あの2005年、日本人として中国人の社会で生活することは
時として苦しく悲しい気持ちになることもありました。
一方で、自分の歴史認識がどれだけあやふやであるかを知り、
あわてていろいろな本を読みました。
歴史の事実を知らなければ、また、日本の何が間違っていたのかを正確に
把握していなければ、中国人とまともにこの話題を話すことはできないし、
その後に日本の良いところを傲慢な響きなしに紹介できない、と。
日本に旅行したり、実際の日本人に会う機会がほとんど無いような
生活を送っている多くの中国人にとってみれば、
テレビや新聞の情報が日本の全てであり、ひょっとしたら私が唯一出会った
日本人で、その限られた情報だけで日本と日本人に対する印象を
良くも悪くも形成してしまう・・・。
そんなことを身近に感じたときは、とても怖く感じたり、いやいや、
ちっぽけな自分一人がそんな難しいことばかり考えていてもない、
中国人でも日本人でも、結局は人対人のコミュニケーション
なんだから、と自分で自分をはげましてみたり。
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2006年9月、日本の首相が小泉さんから安倍さんに変わりました。
安倍さんは最初の訪問国に中国を選び、この4月には
中国の温家宝首相が日本を訪れます。
そんなニュースから、中国の日本に対する感情が少しずつ
和らぎ始めた気がします。
事実、小泉首相の靖国参拝のときにはうちのボスの電話に
悪質な無言電話が何本もかかってきていたらしいのですが、
(ここは日本の合資会社で、日本製品を輸入販売しているので)
最近はそれも無くなりました。
日中関係に改善の兆しが見え、これで一安心だよ、
とボスは笑っていました。
気がつけばいつしかテレビから旧日本軍の映画が消え、
最新のニッポンの<良いところ>が報道され始めました。
また、靖国問題についても、参拝する人々の姿ばかりではなく、
反対派の意見も深く掘り下げて取り上げられるようになりました。
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最近、中国でとても良い番組が始まりました。
「岩松看日本(ィェンソン カン リィベン:岩松が日本を見る)」
という番組で、中国中央テレビ(日本のNHKのような局)の
有名キャスター・白岩松(バイ イェンソン)さんが
2週間以上にわたり日本の<今>を取材した番組です。

その番組の中では、これまで中国ではあまり知られていなかった
<日本の素晴らしいところ>が、様々な角度から紹介されています。
中国人の目から見て日本を紹介するこの番組を通して、今、
私は日本人であることの嬉しさやちょっとした誇りなんかを
をとりもどせた気がします。
「岩松看日本」というこの番組は、今、中国人の日本に対する
心と眼を大きく開かせるであろうと同時に、
中国に住んでいる私みたいな日本人のことも元気付けてくれて
いますよ!と、声を大にして言いたいのであります。
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実際のところ、「岩松看日本」は本当にオモシロい内容なのです。
読売新聞オーナーの渡辺恒雄、作家の渡辺淳一や村上龍などを
インタビューしたり、日本の環境対策やゴミ分別が
どれほど進んでいるかを紹介したり。
近日中に放映される中曽根元首相のインタビューも楽しみなところです。
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例えば、日本ではすでにあたりまえのこととして定着している
ゴミの分別やリサイクル。
白岩松さんが取材中に驚いたエピソードとして紹介したのは、
収集車が去ってしまいゴミを出しそびれた主婦がゴミを家に持ち帰る風景や、
スーパーのリサイクル品収集ボックスに集められる空トレイ・空牛乳パックが、
どれも消費者がキレイに洗ってから入れられている、ということ。
白岩松さんは、
「経済の急発展をとげた日本は、その負の産物であった
環境汚染に80年から本格的に取り組み、26年たった今、
非常に美しい国家に生まれ変わっている。」
と伝え、さらに
「中国国民も、10年後にはたしてここまでになれているだろうか?」
と付け加えました。
日本では普通だけれど、そんな日本の姿を改めて中国のテレビで見て、
日本人として、エヘン!とちょっと誇らしいとともに、まずいまずい、私も
中国にいたって、きちんと日本人基準で行動しなきゃね、と思ったり。
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それから、渡辺恒雄さんのインタビューも面白かったです。
ナベツネさんは、日本にいたころは巨人軍のワンマンオーナーみたいな
一面しか知らなかったけれど、この「岩松看日本」で見せた日中関係への
深い思い入れと真摯な一面には非常に感銘を受けました。

ナベツネさんは首相の靖国参拝をとめる最後の切り札として、
山崎拓さんから頼まれて小泉さんに直接電話をかけたのだとか。
そんなナベツネさんは、右翼から脅迫電話がかかってきたり、
危ない目にもあっていながら、こんなことを言っていました。
「ある日どこかで刺されたとしても、もう80年も生きているんだから
十分だと思っているんです。だから恐れずに正しいことを伝えて、
日本の若い人たちに歴史の真実を知ってもらい、そして日中関係が
良くなればいいと思います。」
・・・泣けます。男子の本懐。
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ところで、このナベツネさん、インタビューの最後に
白岩松さんに逆に質問していました。
「中国を代表するメディア人であるあなたは、歴史問題について
日本は何をすれば良いと思うか、教えてくれませんか?」
白岩松さんは、人生経験の浅い自分の考えですが・・・と遠慮がちに
こう答えました。
「戦後のドイツがそうであったように、歴史の事実から目をそらさずに
受け入れ、未来のために新しい友好関係を築けばよいと思います。」
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私は中国に来たことで、自分がどれだけ戦中・戦後の歴史に
無関心であったかを知り、無知であることの怖さを感じました。
それは、自分にとって非常に良かったこと。

歴史問題に無関心・無知だった私が、ビギナーとして
最初に選んだ入門書は、この2冊。オススメです。
高橋哲哉 『靖国問題』 ちくま新書
保坂正康 『あの戦争は何だったのか』 新潮新書
でも、歴史はその部分だけ切り取って議論できるものではなく、
その背景にある古来からの文化、前後の政治、その後の教育、など
ありとあらゆる問題があって、知ろうとすればするほど、
さらに知らないことが増える一方。
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あせって本をいくら読んでも追いつかないけど、変に怖がっても
意味が無いですよね。
今日もこの国で中国人と一緒に生活して、オシゴトして、
中国人の同僚たちの優しさに触れて、ホロリとして。
頑張りすぎずに、できることをやろっと。
・・・いやぁ、長くなっちゃいました。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
