六本木の超高級レストラン-2-

CHAIR OF KING, TORONTO
我が家玄関小ホールの王様お気に入りの椅子
さて、その料理とは・・・「ハンバーグステーキ」!・・・一瞬周りが静まり返りました。フランス料理の専門家として熱烈な招待を受けた人物が、ハンバーグとは!誰でも天才料理人の最高級のメニューを想像するのに。
その時秋山さんは、少しも騒がずこう言ったのを覚えています。「はい。特別なソースで作らせて頂きます。」今思うとこの冷静さ、本当にお偉いですね。
しかし何故父はそのような大衆的な料理を食べたかったのでしょう?もしかしたら、「初心忘れるべからず」ということだったのではないでしょうか?単純な、一見誰でも作れる料理の中に、この天才料理人の真髄を見ようとしたのではないでしょうか?正に前代未聞の出来事でした。
豪華絢爛、超高級なこのレストランは、まるで砂漠の蜃気楼の様に、瞬く間に消えてしまいましたが、
その精神だけは、今も生きています。
大分前になりますが、私が主催する「美食会」の打ち合わせで、当時女性に最も人気があるといわれた、レストランのオーナーシェフと会ったことがあります。私が敬愛するホテル料理長の紹介で伺ったので、快く迎えられ和やかにお話しました。
今は日本の代表的な、いわゆるフランス帰りのオーナーシェフとして広くしられているこの人から、思いもよらない秘話を聞かせて貰いました。
それは、その人がキャラバンサライで修行したということです。当時も現在も、そういう経歴は表に一切出てきません。それこそ「私だけが知っている」かも知れません。
その人は、グリーンボーイとしてこのお店に入った時、誰よりも早く出社してあることをしたそうです。そのあることとは、食材の勉強です。とにかくお金に糸目をつけないお店ですから、当時でも日本最高の食材が揃っていたことは容易に想像できます。
その人は、今まで本でしか知りえなかった高価な食材を実際目にしたり、触れたりしながら、前日の激務の疲れも何のその、朝早くから一人調理場で、これを使って将来は立派なシェフになる!と夢見ていたのでしょう。偉くなる人はやっぱり違う。そう感心したことをよく覚えています。
私は、日本のグルメの記事を目にするたびに、余りにも「歴史」に触れられていないような気がして残念でなりません。カリスマなどという言葉の乱用を出来るだけ控え、日本を代表する料理人の皆さんの足跡と偉業に心を馳せて頂きたいと願っています。
今は無き、超高級レストラン。もしあったら是非また行きたいですね。そして心を込めてハンバーグステーキを注文してみたいと思います。
